2024.08.01 更新
朝乃山
 この7月名古屋場所の4日目、朝乃山の土俵上の怪我をTV生中継で見ていた。
押し倒された後立ち上がれず、車いすで退場。何せ、左膝が逆に折れ曲がっている。病名は左膝前十字靭帯断裂、左膝内側側副靭帯損傷、左大腿骨骨座礁。聞いただけでも恐ろしい。

 朝乃山。コロナ禍の大関時代、規範に反し6場所(1年間)出場停止で三段目まで番付落としやっと戻った幕内でも怪我続きで、直近は先場所巡業で右膝炒め休場。満を持しての今場所は、3日目まで全勝。そしてこの4日目のアクシデント。
コロナ禍までは次の日本人横綱候補、あのトランプ(当時)大統領から土俵上で表彰と、期待を一身に受けていたが…。
完治まで半年かかるらしい。それから稽古に励んでもその時の予想番付は再び三段目。右膝と今回の左膝と両膝を負傷している訳だ。一般人でも歩行困難なのにプロの格闘技にはきつすぎる。
 TV見ていて私は、直感的に力士を辞めるのではないかと思った。年寄株はまだなので引退でなく廃業。肉体的回復の前に、気持ちが続かないだろう。照ノ富士,若隆景、宇良と怪我で三段目、序二段と下がって復帰した力士はいるが、朝の山は現在30歳で二度目のアクシデント。再び這い上がってくる気力があるか…。難しいと思う。

 力士の怪我。
かねてから、土俵をもっと低く、土俵下四方を広くしてマットを引くなどの改善策のあれこれが相撲ファンからは多く寄せられているが、改善の兆しは全くない。一番は、公傷制度導入だろう。土俵と言う仕事場での怪我、一般社会で言う労働災害補償。つまり、怪我する前の待遇保証=番付保証=給与保証である。番付落ちたら自分の力で這い上がってこいでは惨すぎる。幕下からは無給である。「怪我は稽古で直せ。自分たちの時代はそうだった」、とにかく意味不明、時代錯誤の弁。挙句は「かっての公傷制度時代、悪用する力士がいた」…。

 現実を見て見よ。ほとんどの力士が怪我を抱えつつの本場所だ。治療専念のため、休みたくも保証がないから休めない。ある幕内力士が言っていた「関取のほぼ全員が、障碍者手帳持っている…。
200キロ前後の牛の様な体格だが、病人であり、障碍者の、必死の土俵を我々は気楽にTVで見ている訳だ。

 自分たちの属する組織が自分たちを守ってくれない。と、なると人間自分で自分を守るしかない。以前カド番脱出の翌日休場した大関がいた。ことほど左様な事が起こってくる。
そしてついには、星の貸し借りへ発展する。立ち合いの一瞬の変化や、満身創痍の身でありながら一気の寄りという決まり手の出来レースで。その勝負に、NHKアナウンサー,解説者がどんな美辞麗句を並べ勝者、敗者がサバサバした顔していても、TV生中継の土俵は正直、何でもお見通しだ。
 これらを、見て見ぬふりする土俵下の5人の勝負審判や、相撲協会の偉い人たちは、現役力士を:人生の特俵:まで追い込む資格はない。
「ムービー軌跡」
千代野基金

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