2025.02.01 更新
第194回 下駄
 昨年末大晦日の「紅白」で、イルカの「なごり雪」と、南こうせつの「神田川」が評判だったらしい。この二曲と、小欄185回の高石ともや「街」をトータルイメージすると、答えは「下駄」に落ち着くとの独断だ。


 春夏秋冬下駄を履き始めて3年になる。何でそう言えるかというと、冬には五つ指の靴下を3回履いた記憶があるから。人は「寒かろう」と言うが、足先に力が入っているせいか平気だ。写真の下駄ですでに十足位になる。安物は足を乗せる木板=台と、歯が別々の木で出来ているが、高級品は一本木になる。どこが違うか、音が違う。前者は、ただがらんごろんとの響き。後者はカランコロンと乾いた音がする。そして決定的な差は履き続けて歯が擦れていくと、前者は鼻緒辺りから縦に割れてお釈迦になるが、後者は歯が擦り切れて、台がまさしくまな板状態になっても割れない。下駄と言うより板状態で歩ける。と、ここまで言えるのが経験者の強み。そして、写真の下駄は会津の桐一本木と言う高級品。頭からずっと目を落として足元に高級感漂わせてこれで三足目になる。ボロは着てても心(足元)は錦ってところか。梅雨には抜群だ。靴だと靴下共々濡れてどうしようもないが、下駄はその歯の高さ部分で雨除けになり、帰宅して濡れた素足をタオルで拭くだけで良い。いたって衛生的。何と言っても歯の高さ分だけ背が高くなり、格好よく見える(はずだ)。

 そんな格好よりカランコロンの音で、東寺観光の外国人は視線を落とす。音を出す履物は珍しいのだろう。そして我が日本の高齢女性は、バス停などで声をかけてくる。「まあ~下駄だなんて、懐かしい」、「ウチ兄も良く履いていた」、近所の花屋「下駄を履いているお客さんは富田さんともう一人ですわ」。高齢男性は理髪店で「上手く履いてますね」、これは左右の歯の擦れが内側外側が均一な事を言っている。そりゃそうだ、こちらも蟹股の両脚を考え、左右を時に逆にしながら履いている。それでも鼻緒は問題なくすっと足になじむ。
そして嬉しい事には、声かけは若い女性からも。近隣のコンビニバイト、昼下がりで他客いず店がヒマだった事もあり「下駄カッコ良いですね。いつも見てました」と。「いつも見ていました」が、この74歳をくすぐる。
 昔、妻の手を引いて男性介護の姿を示していた東寺のおっちゃんは、今、下駄の音で日本の履物文化を響かせている訳だ。現代の「なごり雪」「神田川」世代にも受けていることもわかった。私と同世代の大分出身の南こうせつは1歳上、そして今回の新発見はイルカさん。エエッ何と!生年月日が全く同じ。これまで月日が同じは数人いたが、年まで同じは初めて。さあ~二人に負けていられない。
「ムービー軌跡」
千代野基金

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