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特別企画連載

つながり、分けあいD  佐伯快勝(浄瑠璃寺住職)

 文化財からの発信

 
 北山十八間戸、大茶盛、御教誡聴聞集と、西大寺の叡尊(えいそん)にかかわる話がつづいたが、じつは今年がその叡尊生誕八百年記念の年に当たる。
 奈良国立博物館ではいま「仏舎利と宝珠―釈迦を慕う心」という特別展が九月二日まで開かれている。ここに叡尊の肖像や在世中に造顕された舎利容器や舎利宝塔、関連の仏具や文書など多数が出陳されている。奈良博恒例の三日間の特別講座はずばり「叡尊」であった。
 叡尊が中興し活動の拠点にした西大寺でも、今年は秘仏開扉など特別拝観が十一月四日までおこなわれている。叡尊四十七歳のとき造顕され念持仏にしたという秘仏の愛染明王像、四十九歳での生身釈迦如来像、八十歳の姿を弟子たちが熱望して写したという寿像、没後十三回忌に造られた文殊騎獅及四侍者像、三十三回忌での弥勒菩薩(ぼさつ)像など多くの仏像や寺宝が公開されている。
 奈良博での舎利、宝珠関係、西大寺での仏像などの文化財は見事だ。これらを企画し、設計し、材料を整えて製作した人間の感覚、能力、技術力、情熱。こうしたものをうみ出すために結集し、合力できる人間集団のすごさ。あらためて考えさせられる。
 十三世紀、混迷の時代に社会の最底辺に追いやられた貧窮孤独苦悩の人々を救済することに、生涯を捧げたといわれる叡尊、忍性(にんしょう)たちは、一方ですごい文化財をうみ出していた。
 彼らが残した文化財や事跡は、人間の思考など遠く及ばぬ、大自然の中にある偉大なるものの存在をしかと感知して、畏敬した結果ではないだろうか。我を捨てたその精神の強さこそ、人間の生きる支えであり、活動源だと教えてくれる。(完)

   (しんぶん「赤旗」2001年7月30日掲載)


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