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特別企画連載
自然・人間ふれあいの旅  日本一周自転車ツアー完走記 (9)

武田万徳(久御山町在住) 

 道東は無料の露天風呂天国
 汗と雨に濡れてあがってきた知床峠を今度は一気に下がる。路面は濡れていてすべりやすい。そのうえ急カーブの連続だ。 下がっているうちに猛烈に猛烈に寒くなってきて手がかじかみ、ブレーキが握れなくなってくる。寒さに震えながら慎重に羅臼まで下りてくると、川の向こうに露天風呂「熊の湯」があった。北海道は温泉天国でどこでも温泉があったし、無料で入れる景色のよい露天風呂も多い。特に道東は露天風呂の宝庫である。
 
つり橋を渡って行くと板塀のむこうに「熊の湯」があり地元の人が5〜6人入浴中だ。脱衣所ですぶぬれの服を脱いで岩造りの露天風呂に入る。きれいな山と川が見下ろせ景色は抜群だ。お湯はやや熱い。「熱いですね」と隣の人に言うと「今日はまだぬるい方」と言われる。冷えきった身体には熱く感じるのだろうがおかげでほかほか暖まる。また地元の人ともいろいろ話す。屈斜路湖の2つ露天風呂もよかった。コタン温泉は屈斜路湖の東側の湖と同じ高さにあり水に手が届きそう。湖では多くの人がウインドサーフインを楽しんでいるのがよく見える。誰も入浴していないのでゆっくり景色を楽しみながら入っていると、珍しいのかアベックがのぞきに来る。露天風呂はだいたい混浴なので見られるのにも慣れた。
 湖の西側の和琴温泉も隣め抜群でよかった。この時は小雨が降っていたが脱衣所には屋根があったので、荷物をおいて入る。露天風呂に注ぐ小さな川があって場所によって温度が全然違う。地元の人が1人先に入っていて 「ここが暖かいよ」と教えてれる。自転車で日本一周していると言うと、とたんに目が輝く。若い頃ロードレースをやっていたらしい。今は 「何でも屋」をしていて北見から車で1時間かけてよく来るそうだ。「明日何時に出るの」と聞くので 「8時に釧路に向けて出発します」と答える。
 
 何でも屋ゴロ−さんと走る

 次の日、屈斜路湖畔の民宿を8時に出発して湖畔から走って行くと、なんと昨日の 「何でも屋ゴロ−さん」が車でやって来た。「俺も走るからよ」と車からロードレーサーを出してきて、レースウェアに身を包みヘルメットも本格的でかっこいい。「仕事はいいんですか」と聞くと 「今日は夕方犬の散歩だけだから大丈夫」と伴走してくれる。いつも1人で走っているので連れがいると楽しい。といっても重装備のツーリンク車と軽快なロードレーサーではスピードが全然違う。
 釧路まではだいたい下りなので以前トライアスロンに出たころのようにとばす。ゴローさんは軽くこいでいるが、こっちは必死。日本一周しているメンツもあり離されないようがんばる。平均時速30キロ以上でこの旅で1番遠く走る。がそのうちゴローさんは、バテてきたようで「休息しよう」と時々止まる。その度に煙草をうまそうに吸っている。これじゃ持久力はだめだというが、煙草はやめられないらしい。ゴローさんは釧路近くまで伴走してくれるが、夕方の犬の散歩もあり途中のレストランで昼食をごちそうになりさよならする。その時ワインを1本空けるが、そのおかげで気持ちよくフラフラと千鳥足で下って行く。

 きれいに見えた露の摩周湖
 北海道へ来たら絶対行きたかったのが摩周湖である。霧の摩周湖というくらい霧に包まれていることが多く、見えたらラッーキーだという。途中で会った旅人も霧で見えなかったという人の方が多かった。10月13日夕方に摩周湖ユースに着くが、その
日は暗くなってきていてダメ。
 翌日の天気予報はくもり。あまり期待できそうもないが連泊しても摩周湖だけは絶対見ようと思う。次の日、朝6時に湖にむけて出発する。6キロほどの山道を上っていく。空はどんより曇っていて、空気は清々しく冷たい。汗が吹き出し1時間かけてやっと到着。期待に胸をふくらませて階段を上っていくと、神秘的な摩周湖の全景が見えたのだ!ラッキー!流れ込む川も出ていく川もなく、高い山に囲まれて静かに水をたたえる摩周湖にしばし見とれる。ここまで出発してから26日間、2800キロかかったのだが、雨にうたれ、風に吹かれても来たかいがあった。今度は一人でなく、愛する人と訪れたいと思った。

   強風の襟裳岬を走る
 釧路から暗くなった国道38号線を南に向けて走る。午前中ゴローさんと走った時、とばしすぎて、そろそろばててくる。公園で少し横になってワインの酔いをさましてから走る。
 しかし、海沿いに走るとまたしても向かい風。スビードがずいぶんおちるが襟裳にむか ってひたすらべダルを漕ぐ。道の駅「しらぬか」で村田さんに聞いていた豚丼を食べる。分厚い豚肉とうなぎが入 ていて少し甘くてジューシでボリューム満点、ビールが欲しいところだが我慢して出発。 途中で電池がきれ、真っ暗な国道を走るが車もあまり来ない。
 店も街灯もなく真っ暗だが、空を見上げると満天の星。でも危ないので途中で見つけた上厚内の無人駅で寝ることにする。
 次の日は、朝5時に起床。寝袋をたたんで6時すぎに出発。38号線から336号線に入り広尾町から海沿いの景色のよいところを走る。海はうねっていて大波が見える。黒いスイムスーツを着た若者がたくさんいて、サーフイーンを楽しんでいる。
 ここは黄金道路という。金山でもあったのかなど思うがそうではない。陸は交通の難所で船でしか近づけなかったらしい。生活が不便なので道路つくろうと工事するが、難工事の連続で多くの人が命をおとし、多額の金がかかった。道路に黄金を敷きつめた位お金がかかったので黄金道路というらしい。風も強く襟裳岬は強風で不毛の土地だったらしいが、いまではきれいに植林されている。

 室蘭からフェリーで青森へ
 北海道内は1835キロを19日間で駈け抜ける。雄大な自然と、旅人も含めてあたたかくて親切な人たちと出会い、エゾシカやキタキツネ・りす・熊(音だけ)などを見ることができ幸せな旅だった 。しかし、不況の波が押し寄せ人々の暮らしは楽ではない。狂牛病・雪印食品の不正は、北海道の主要な産業である酪農家を直撃する。冬になれば雪に埋もれて仕事はなくなり失業者があふれる。
 しかし、きびしい自然とたたかつてきた人たちは、自分たちが住む社会をよくしようとたたかつている。介護保険料・利用料の減免が全国一進んでいるのはその一つではないだろうか。札幌にある北海道生活と健康を守る会と交流した時、「全道で生活苦の人が多く、斜里町では10%の生活保護所帯がある。国保の保険証を発行してもらえない所帯が全道で1万件を超えた。国保科を払えない人が病気になっても10割の医療費が払えるはずがない。医者にいけなければ命にもかかわる。生健会では毎週相談会をやっているがたくさんの人が相談に来る。道営住宅の家賃減免の相談も多く、古くから住んでいる住宅の痛んだ畳も公費で修理させている。
 来年は北海道で大会があるが、住民の要求にこたえられる大きな生健会にして全国の仲間を迎えたい」と佐藤事務局長が熱っぽく語っていた。初めて訪れた北海道で自然・人間とふれあい、多くのことを学んで、10月18日室蘭からフュリーに乗る。
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