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熱い想いを語るトーク・トーク 4 

鹿背山西念寺書院の襖絵をみる

日本美術会 久保田壹重郎

                                                   京都南部、木津町の東端、木津川右岸に鹿背山西念寺がある。古くから「万葉集」や「古今和歌集」などに詠まれ「枕草子」には「山はおぐら山、かせ山、みかさ山」と歌枕の地として知られている。中世はもちろん戦国時代から鹿山(かせやま)鹿山寺などと称され今日に至っている。鹿背山村人の先祖をお祭りする浄土宗の寺である。
 この地は現在でも須恵器が出土し、瓦窯跡があり、古くから焼き物(鹿背山焼)がつくられている。

 この度、西念寺の書院再建に際し、襖絵きを依頼され、18枚の襖絵「生々化育・四季」を完成させた。9月に落慶法要、11月24日〜26日に秋の一般公開がおこなわれ、この3日間で360人余の方が、お参り、参観をおえられ、大盛況であった。

 この「生々化育・四季」の襖絵は、春夏秋冬の流れをイメージに、自然が万物を育て、宇宙の運行を営む四季を描いている自然のおかしがたい力をひめて、美しい、きびしく、ものの生命の共存を主題にしている。
 この絵は、八帖間二間にあり、床の間のある部屋は、自称「はぐくみの間」と称し、まだ、つめたい空気を眼に感じる初春のさくら、そして花が満開、そして花びらが散りかけ、その背後には、命ある実がみのるという表現をめざしている。春である

 夏は、その実がはぐくまれ、豊かに生育するさまを暑い夏に、涼を求めながら描いている。
 次の八帖の部屋は、自称「ふりかえりの間」と称して秋、冬を描いている。

 西念寺の境内には、紅葉が美しく、人にも知られている。その紅葉をモチーフに画面全体に配して描いている。その右の方に「本葺き屋根の門」その横に「つり鐘堂」をかき、いづれも屋根を「ほりぬき」という技法でかいている。
 この寺を訪れたとき、この門をくぐって、つり鐘をみた。そして、また、絵のうえでも再び見ることになる。
 このつり鐘は、先代の住職が戦時中、官憲が何回となくきて”国のために供出せよ”とせまり、住職が”この鐘は、村人たちが生活し、一生懸命にはたらくための大切な鐘である。鐘の音で生起し、しごとにはげむ量である。”と強く反対した。国賊よばわりされたが、最後まで反対をとおした。今、ここに残っているものである・・・・・。

 この鐘は、江戸時代に造られたものであり、その表面に「國豊民安、兵戈無用」(へいか=戦争のこと)と刻字してある。平和と命を大切にした、おかしがたい鐘である。そして秋は、収穫の時である。豊かな実りは、春・夏ではぐくまれ育った成果である。反省をこめて収穫をよろこびあう季節である。
 冬は、いっそう抽象性のある造形で、大雪原の中で生きぬく樹とそれを守り育てる人間が植林した唐松林を描いている。自然と人間の共存の世界をテーマにしたものである。
 そして豊かな土じょうをつくり、雪どけ、ふきのとうが姿をあらわし春を迎える。
 そんな思いで、この書院にすわり、住職の話をきくことになる。一度西念寺を訪づれてはいかがですか。

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